火曜日。
作業所は午後から出張プチ肉体労働の当番でした。
この仕事をすると、足の指やふくらはぎが攣ることがありますが、今日はそうならずに終わることが出来ました。
さて、最近書いていて気になる点が。
いつの間に「ですます調」になっていて、それがいつからなのか思い出せません。
おれは硬質な文を好む傾向があるのに。
「ですます」調は硬質ではない、との思い込みがあるのかもしれません。
初めて書いた小説は「ですます」調でしたが、それは井伏鱒二『屋根の上のサワン』のようなものにしたかったからです。
あの作は、おれに「文芸という分野が在り、それは信ずるに値するもの」と思わせたのでした。
40を過ぎたころに自前のパソコンが部屋に来て、インターネットやらを覗いてみると、「文章虎の穴」というサイトを紹介してくれた人がいて、行ってみると、そこは小説家でない者が小説を投稿する場所でした。
衝撃的でした。
小説は小説家が書くものだと思っていたから。
投稿された作に人気投票的なランク付けがされていて、1位は養豚場の豚が空を飛ぶ話でした。
ビビりました。
最後まで読んで、すげー、と。
ラストで豚が青空を突き抜けますが「良いものを読んだ」と感動しました。
それ以前に豚が飛ぶシーンは、夏目漱石『夢十夜』の最後の一話でしか読んだことがなかったし、漱石のものは「意味」を考える類いのものではないし。
1位の作は人間社会を養豚場に例えているように思え、当時は「メタファー」などという語彙はおれにはなかったから、小説家ではない人がこれを書いたのか、すげー世の中になったもんだ、と驚いたのでした。
小説投稿サイト黎明期で、おれは表が「作家でごはん」で、裏が「~虎の穴」的な捉え方をしていました。
表は読んだ者の感想がよそよそしくうそくさかった。
裏は鈍くさいものには容赦なく「鈍!」と。
おれは裏を支持し、よし、おれも書いてみよう! と。
ネタは野良猫がおれになつき、仔を産んでおれに見せてくれた体験を元にしました。
書き終わるとあまりに短くて、力士の四股や鉄砲つもりで書いていた夢を描写したストックからなんとなくマッチするものを挿入しました。
それでも原稿用紙換算で12~13枚にしかなりませんでしたな。
タイトルも良い案が思いつかず、井伏の「サワン」をそのまま拝借しました。
投稿すると感想が付き「左腕投手がどうしたって?」と。
あまりに予想通りで笑ってしまいました。
さて、ここ最近ずっとギターのことばかり記してきましたが、おれを精神が安定する場所に導いてくれたのは、レノン&マッカートニーでもBBキングでも吉田拓郎でもなく、吉行淳之介であり色川武大であり田中小実昌でした。
これからはギターネタを少なくして、文芸にまつわるあれこれを記したい、と思う秋の夜更け。
いい忘れましたが、初めて書いた作は「ですます調」を「である調」に直しました。
いまネットに晒しているものは「である調」です。
あと、いま思い出したのですが、谷崎潤一郎『文章読本』は「ですます調」で、他の文章作法が書かれたのものように退屈ではありませんでしたな。
もしかすると「ですます調」効果かもしれませんね。
ここまで。
明日も書きます。
今夜の1曲。
マッカートニーの才もたまにはウザいときがあります。
『キャント・バイ・ミー・ラヴ』。
あたまからあのリフレインで、途中でもあれを繰り返し過ぎていると思います。
ハリスンのギターソロが珍しくブルージーなのに。